HEROES JOURNAL #視点を変えてみる

すぐに答えを出せない理由は、いつも言葉になる前にあった

なんとなく違和感があるのに、言葉にできない。そんな経験ありませんか?

私は打ち合わせの場において、どこかそわそわとした「些細な違和感」によって、気持ち悪く感じることが多い。
さらに言えば、デザインに落とし込む作業では答えが見当たらないような「ひっかかり」に躓くこともある。

「どうしたい?と聞かれたのに、まったく言葉で説明できない。」
「これで進めましょうとスムーズに終わった会議なのに、モヤモヤが残っている。」
このような違和感やひっかかりを感じているのに言葉にならなかった場面は、きっと誰にだってあるはず。

そのような時、答えが見当たらないのではなく、まだ整理できていないだけかもしれない。

これは、もしかすると「言葉になる前」ではないだろうか。私はそう考えている。

私たちは、自身が語れる以上のことを知っている。
事実、人間は多くのことを暗黙知で判断して生活していると言われている。

だからこそ、この「言葉にできない」には、意味があるかもしれない。

現代社会では、情報が溢れており生産性が求められている。
違和感を気にするよりも、言葉にすることを優先させられる。

しかも社会を生き抜くには、それが最適解のように思えてしまう。

しかしそれでは、思い込みやその場の流れによって、重要ななにかを都合よく切り捨てているのではないだろうか。

私の感じる違和感やひっかかりは、過去の経験が圧縮された暗黙知によるアラートだったように思えていた。

個人のパフォーマンスを高める一方、暗黙知は思い込みによる失敗の要因にもなり得る。

先入観や固定観念を生み出し、それがヒューマンエラーの事故に繋がったニュースも溢れるほど多くある。

つまり信じるべき情報と、疑うべき情報。それは暗黙知という頭の中の同じようなものから生まれてくるのだ。

時に、声の大きい理屈や過大な数字は、この「些細な違和感」を簡単にかき消してしまう。

眼の前で繰り出された、魅力的なビジュアルやトーンによって本質を見失いそうになる。

そんな時、過去の経験が圧縮された直感によって、必至に静かなアラートが発せられることがある。

広告の現場では、この静かなアラートを無視することで結果が伴わないことも多い。

ターゲットの求めるものとズレている。ブランドメッセージの文脈が合わない。企業のやりたいことが見えてこない。

気づくのはたいてい時間が経ってからだ。

この言葉にならない違和感やひっかかりを置き去りにしない姿勢。これまで自分の中で感覚的にやっていた物事への向き合い方。

気づいたら、これが「デザイン思考」という言葉で呼ばれていた。名前があることを知ると、判断は驚くほどにスムーズになった。

しかし「デザイン思考」は、正解を早く出すためや選択を間違わないための方法ではない。

些細な心のひっかかりを単なる気の所為と断定しない。そして簡単に見逃さない。そんな取り組みだ。

これは、単なる思考法ではなく、人に寄り添う姿勢だと捉えている。

すぐに答えを出せない理由は、いつも言葉になる前にある。

あなたの中でまだ言葉になっていない答えはありますか。